DAWソフトを触られる皆さんにとって一番馴染み深い装置であろう「イコライザー」。
イコライザーとは、日本語に訳すと“均等化する”といったような意味になりますが、
ある周波数帯をブーストしたりカットしたりして"均等化する"ことがイコライザーの役割であることは皆さんもよくご存知ですよね!
今回から数回に渡って、イコライザーについて書いていこうと思います!
さてさて、本ブログの読者のうちの多くの方がイコライザーを主にブーストする方向で想像&使用していることと思います。
しかし実は意外なことに、経験上ブーストではなくカットする方向で使うほうがより望ましい結果を得やすい場合が多いです。
前回までお伝えしていたコンプレッサーは音量の急激な変化を抑制する使い方をしますが、
イコライザーは不要な(ちょっと語弊があるかな... 出過ぎた?)周波数域を抑えて、音楽全体をバランスよく聴くために調整する、というような使い方をします。
もちろんサウンドを強調するためにイコライザーを使うこともありますが、どちらかというと目立ちすぎる部分を抑えて全帯域のバランスを整えるほうが自然な場合が多いです。
人間というのは保守的な生き物で、急激な変化やバランスが崩れることを好まない傾向があるんですねー。
さてさて。そんなイコライザーですが、一概にイコライザーといっても実はいくつかのタイプに分類することができ、それぞれに得意分野があります。
まず今回は、それについて見ていきましょう。
シェルビングとかシェルフと呼ばれているイコライザーです。
ステレオやラジカセ(今はそういうもの無いか?)などについているトレブル、ベースなどと大ざっぱな表現で書かれたつまみは記憶にないでしょうか?あれはまさにシェルビングEQです。
シェルビングEQは、ある周波数帯(ハイやローなど)をまとめてざっくりとコントロールすることができます。
以下の図は、高域(HF)で3.17kHzをポイントにシェルビングイコライザーで8.1dB分ブーストしています。
3.17kが上昇カーブ(スロープといいます)の中心になってるかんじですね。このスロープは“Q”というパラメーターを調整することで穏やかにしたり急激にしたりすることができます。
ちなみにシェルビングタイプのイコライザーには、“Q”が付いていないものもあります。
こういった場合、スロープの元々の傾きがそのイコライザー独自のカラーに繋がったりします。
ベルカーブ、とかピーキングとか言ったりもするこちらのイコライザー。
使い始めはわかりにくくて敬遠しがちでしたが、慣れると本当に自由度が高く作業に欠かせない存在となりました。
このタイプのイコライザーの場合、調整できる帯域毎にいくつかのバンドに分かれていることがあります。
下図は、Pro Toolsに標準で付属している“EQ3-7Band”とWavesの“Q10”です。
↑EQ3。Pro Tools純正プラグインです。
↑Waves/Q10。最近GUIが刷新されてかっこよくなりましたよね!
EQ3を元に話を進めましょう。先ほどシェルビングのところで調整したパラメーター(HF)がありますが、ここの上部にボタンが二つ並んでいます。左側はピーキングタイプを意味し、右側はシェルビングタイプを意味しています。
先ほどは、シェルビングが押されていたのですが、ピーキングのボタンを押してみましょう。そうすると....
ご覧の通り、持ち上がり方が変化しましたね!
このように一つのイコライザーでいくつかのタイプを切り替えられるものもあるので、状況に応じて使い分けるといいでしょう。
ちなみに、前述の“Q10”はすべてのチャンネルで6タイプを切り替えられますよ!
ちなみに、上記の内容を組み合わせると下図のような複雑なシェイピングも可能です。
これぞまさにパラメトリックEQの醍醐味ですよね!
調整する帯域別にフェーダーが並べられていて、それを上下させることでその帯域を調整する...THE シンプル!
とにかく見た目がわかりやすいのが特徴です!
1つのフェーダーにはそれぞれ受け持っている帯域があるわけですが、微妙に隣の帯域にも影響を与えます。
つまり、調整できるバンド数(フェーダー数)が多いとそれだけ細やかな調整ができることになりますね。
オレは多すぎると迷っちゃいますけど...(笑)
パライコのように積極的な音作りをするというよりも最終的な微調整に適していて、PAの現場で音場の調整やハウリング対策に使用されたりします。
ハイパス(ローカット)フィルターは、ハイ(高域)はパス(通過)させ、ロー(低域)をカットするために使用し、反対にローパス(ハイカット)フィルターはローを通して、ハイをカットするイコライザーの一種です。
例えばアコギなどで低域成分がもたついている場合などに、原因となる帯域より下をばっさりとカットする用途などで使用します。
こういう処理をすることで格段に音がスッキリとして抜けてくるので、フェーダーを動かさなくてもアコギの音を聞き取りやすくすることが可能です。
このように各楽器のミックスバランスに問題がある場合、各楽器の帯域の棲み分けをするようなちょっとした調整をするだけで解決できる場合もあるんです。アコギ以外だと、ヴォーカルの低域なんかはカットしちゃうことが多いです。
しかし、なんでもかんでもカットしてしまうとその音が本来持っている輝きや勢い、質感などを削いでしまうことがありますし、何より位相も悪くなってしまいがち。必要以上のトリートメントには気をつけたほうがいいですね。
さて、イコライザー編第一回いかがでしたでしょうか?基礎的な部分についてはご理解いただけたんじゃないかと思います。
次回からは本日紹介したそれぞれのイコライザーで実際に音を調整しながら更に深く掘り下げていきたいと思います。
イコライザーによってキャラの強いものや逆にさりげなく調整してくれるものがあったりして、それらの使い分けも面白いですよ〜。
お楽しみに!
執筆:福地 智也
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- 2018.05.25 Friday
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